東洋骨董大辞典

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定窯(ていよう)

定窯は中国の河北にあった民間窯です。唐の時代に築かれ、元の時代に衰退していくまでの約700年間、活動しました。中国で白磁を生産した窯の中でも名窯として挙げられ、『刻花(こくか)』や『印花(いんか)』などの模様が付いた、象牙色の白磁が有名です。こうした定窯の作品は大衆から人気を集め、時代の発展と共に技法も進化していきました。

 

 

 

定窯の装飾

 

 

定窯は非常に長い期間活動していた窯であるため、制作された器の種類も非常に豊富です。

初期の頃は鉢や水注、浅い平底碗などが焼かれていましたが、徐々に茶道具や皿、香炉などが焼かれ、装飾の技術も発達していきました。

 

釉薬にも黒釉や柿釉(醤釉)、緑釉など複数種類がありましたが、定窯で注目したいのはその装飾技術です。ここでは定窯で施された装飾技法について、いくつかご紹介したいと思います。

 

 

刻花(こくか):生乾きの状態の素地に木や鉄などの道具を用いて模様を彫っていく技法で、作品はその後釉薬を掛け、焼成することで完成します。比較的深く彫り込むことで作品に立体感が生まれ、線の太さの違いによって変化に富んだ表現をすることが可能です。同時代の窯が釉薬の色合いの美しさで称賛されたのに対し、定窯は特にこの刻花の技法と、次項で紹介する印花の技法を用いた、装飾の美しさを称賛されました。

 

印花(いんか):模様を浮き彫りにした型を、判子のように生乾きの素地に押し当て模様を作っていく技法です。刻花と同じく模様を付けた後に釉薬を掛けて焼き上げられますが、刻花に対して印花は作業効率も良かったためよく用いられました。文様には2種類あり、1つは針のような工具を使い浅めの細い線彫りを表したもので、器に写し取られた模様は微妙に浮き上がり、刺繍の様な繊細な柄を表現します。もう1つは刀状の工具で型を彫っていくもので、写し取った模様は前述した技法よりもより凹凸が深く、立体感のでたものになります。

 

劃花(かくか):刻花と似て、生乾きの面に先の尖った鉄や竹などの道具で模様を彫り込んで行く技法です。彫った線の深さや太さに大きな変化がないのが刻花との違いとされ、劃花では櫛状の道具を使った規則的な模様や、斜めに彫りを入れて筆で書いたような線を表現する手法がよく見られます。劃花の技法で施された装飾的な模様は刻花と併用されることが多くありましたが、その他にも、劃花の技法で描かれた草花、鳥や魚などをモチーフにした文様も多く見られます。

 

 

この他にも、施した釉薬や化粧土をあえて落とし模様を浮き上がらせる『掻落し』や、型抜きや手造りした紋様を器に貼り付けていく『貼花』、『金彩』など、定窯では非常に多くの技法が用いられていました。

 

 

 

定窯は北宋時代の後期までは中国宮廷の直属の窯『官窯』とされています。しかし、その後皇帝によって官窯から外されしばらくすると、金軍に侵入されたことで職人たちが減り、一気に衰退していったと言われています。

 

 

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