長野県長野市で製造されている陶器です。江戸時代中頃に松代藩の藩主が地元のものを使った陶磁器を制作するよう命じ、唐津で修業をした嘉平次という男が藩内で窯を築いたのが、松代焼の始まりでした。
鉄分を多く含む黒っぽい素地と、自然のものだけを使ってできた釉薬を用いて制作される作品は、釉の掛け方や気温などで色合いが異なり、ひとつひとつ違った作品が仕上がります。中でも素地の口元に青緑色の少量の釉薬を掛け窯へ入れ、それが流れ落ちることで独特の流れを表現する「青流し」という装飾技術は、松代焼の特徴です。
松代焼は、当初は松代藩の保護を受け製造をしていましたが、後に大衆向けにも作られるようになりました。
最盛期には信州を代表する民窯となっていたものの、大量に流通した他の陶磁器に押され明治期には衰退傾向に陥り、昭和が始まる頃にはすべての窯が廃業していたといわれています。
しかし、その後廃窯前の松代焼の資料を基に研究が重ねられ、昭和時代末期、松代焼は再興を遂げました。
2014年には伝統工芸品として認定され、現在でも食器や花瓶、置き物などの制作が続けられています。