石川県の珠洲市周辺で焼かれている陶器です。
珠洲焼は窯の中で高温で焼き締められる為、陶土に含まれる鉄分が反応し、焼きあがった素地は青みの強い灰色や灰色がかった黒色になるのが特徴です。また、装飾に釉薬は使用されませんが、焼成中に出る灰によって自然釉がかかり独特の風合いが生み出されたり、綾杉紋や叩き紋などが施されたものも見られます。
珠洲焼の歴史
珠洲焼の始まりは12世紀頃まで遡ります。当初は平安時代の末頃から室町時代後半にかけて、須恵器の製法を継いで製陶されていたと言われています。高温焼成された硬質な陶器は大衆の間で重宝され、やがて大量生産されるようになると、海路で日本各地に広まっていきました。
最盛期には日本海側に沿った日本の4分の1ほどの地域で珠洲焼が使われていたと考えられています。
しかし室町時代後半になると、理由ははっきりと解明されていませんが珠洲焼は衰退し、まもなく途絶えてしまいます。そのため珠洲焼は「幻の古陶」とも言われていました。
その後昭和時代に入り珠洲焼の窯が発見されると研究が進み、1976年、市や商工会議所の尽力によって再興されました。窖窯を用いて無釉で焼き締める、中世の製法がそのまま受け継がれ、現在でも多くの陶工たちが珠洲焼の制作を続けています。